今回の記事は、去年(2020年)の8月に書いた記事の答え合わせ記事です。
32歳の会社員が4年振りに舞台に挑戦することにしてみた。|てみたーず。
大学時代に演劇と出会い、一度は本気で役者を目指したものの、30歳を前に演劇活動を続けることを諦めました。
それから、なんやかんやあって2年前地元に戻ってきて昨年から会社員として働き始めました。
そんなに僕に会社員2年目で回ってきた舞台出演のお話。
小学校の芸術鑑賞会などで行われる学校公演をメインとした児童演劇の出演依頼。しかも、2人芝居。
だいぶ悩みましたが、今回この話を受けることにしました。
その辺りの詳細はこちらの記事に書いてあるので、気になる方は読んでみてください。
結論から言うと、やってよかった。
正直本番を迎えるまで「この話受けるんじゃなかった」とずっと思ってました。
ですが、すべて終わった今、「もう一度演劇を再開しようかな」とそんなことを思っている自分がいます。
今回の僕の経験が似たような状況にいる方の何かのお役に立てれば幸いです。
情熱を取り戻すのと、会社の仕事との兼ね合いが死ぬほど大変だった。
かつて、その道を志し寝食も忘れて必死に取り組んだものの、色々な兼ね合いで辞めた演劇。
そんな演劇が4年ぶりにできるのだから、さぞかし幸せな時間が訪れるのだろうと稽古前は想像していました。
しかし、いざ稽古が始まってみるとそうでもない。むしろ、しんどい。
しばらく離れていると、あんなに好きなはずだった演劇への熱がすっかり冷めていることに気づいてしまいました。
「何かを好き」「これがやりたい」という情熱には賞味期限がある。
頭では分かっていたけど、改めて肌で感じると「ああ、なんてもったいないことをしたんだろう」と後悔におそわれました。
もし今あなたに”やりたいこと”があるなら、ほんの少しでもいいからすぐにやった方がいい。
さらに、以前と違うのは会社の仕事との両立。
バイトさえしてればあとは稽古に没頭できた役者時代と違って本業があるわけです。
就職した友人が趣味で演劇活動をやっているのを見て、「そんな道もいいかもな」と軽く思ってましたが、それは大きな間違い。めちゃくちゃ大変でした。
結果、稽古も仕事もどちらも中途半端になってしまうこともしばしば。
「やっぱり役者として活動するには根性が必要だし、成功する人はすごいなぁ。仕事も芝居も中途半端でこれだけの事で根を上げるなんて、やっぱ向いてなかったんだな」
と凹んでました。
やっていくうちに少しずつ熱を取り戻していった。
稽古の日はいつも憂鬱で、自分で飛び込んだはずなのに、いつしか義務になっていました。
周りからすれば「仕事と好きなことを両立して楽しそう」なんて思われていたかもしれません。
しかし、僕自身の心境としては、24時間”やらねばならない”ことに追われていたので、しんどかった。
本当に恥ずかしい話です。
ただ、そんなお芝居が少しずつではあるけど楽しくなってきた。
「勝負事で、本当に楽しむ為には強さが要る」
ハイキュー第8巻
お芝居は勝負事ではないですが、本当に楽しむためには強さがいる。
今回の僕のケースでいうと、間の取り方、声の抑揚、顔の表情、指先への神経の行き渡らせ方、その他諸々。
舞台上で自由に息をする為の基礎体力。作品への深い理解。
時間がないなりに必死でやっていたことが、体に馴染んでいったのか、本番1週間前くらいでやっと
「あ、お芝居やっぱ楽しいかも」と感じてきた。
それでもしんどさの方が9割だったけど、この1割の楽しさを感じられるまで何とか続けてよかったと思いました。
本番で初めて生きてる実感が湧いてきた。
3日前に行ったゲネプロ(本番と同じように行うリハーサル)も決して満足いく出来ではなく、不安しかないまま迎えた本番。
しかし、実際に舞台に立つとそこで待っていたのは小学生たちのリアルな反応。
小学生は反応がダイレクトに返ってくるから面白い。
退屈なものには「つまらなーい」と大声で言うし、面白いものには声を上げて大笑いする。
気になることがあれば指をさして、僕らに伝えてくれるし、そこに全く嘘がない。
今まで苦悩した芝居のひとつひとつに生まれる反応。
それがたまらなく心地よかった。
そして、演技をやっている最中に次々と湧いてくる”演技プラン”
「ここをもう少しゆっくり見せた方が怖さが際立つだろうか?」
「ここはもう一間置いた方が笑いが起きるだろうか?」
「ここはこういう体の使い方をした方がよりキャラクターらしさが映えるだろうか?」
ひとつひとつ、子供たちの反応をもとに微調整していく。
どうやったら、この子達により面白いお話を提供できるだろう。
そんなことで頭がいっぱいになりました。
そこで思い出しました。
ああ、そうだ。
これが楽しくて俺は芝居をやっていたんだ、と。
次に繋がる選択肢が増えた。
本番終了後、子供たち・共演者・スタッフ色んな方々からお褒めの言葉をいただきました。
中でも一番嬉しかったのが、「ウチの劇団でなくてもいいから、あなたには演劇を続けてほしい。辞めるのはもったいない」という言葉。
なんと嬉しいお言葉。嬉しさのあまり、太字にしてマーカーを引いてみました。
自分には向いていないと思い、辞めた人間にしてみたらこんな嬉しい言葉はありません。
この言葉だけで、どんぶりで軽く50杯はお代わりできます。
「じゃあやってみて」と言われると、それはあくまで例え話でありますが。
共演者の方にも「今後どうするの?芝居やっていくの?」と打ち上げでめちゃくちゃ聞かれました。
僕の今後についてを僕以外の方が言及してくれる。ありがたい話です。
正直、今後どうするかはわかりません。
今回の舞台でいろいろな思いを昇華できたような気がしています。
ただ、それと同時にまた新たな欲も出てきました。
この役をもっともっと深くしていきたい。
今年はコロナ禍で時間も全然取れない中、稽古を進めてきました。
だから、次もう一度やれば今回よりもさらに良いものができるんじゃないか、と思っている自分もいます。
どちらを選ぶかは決めていませんが、”やること”を選ばなかった世界線ではありえなかった選択肢が増えました。
それだけでも良かったなと思います。
ああ。楽しかった。