頭をガツンと殴られたような気がした。
会社の同僚に誘われ、ACO沖縄の舞台『洞窟 ガマ』を見てきた。
日本で唯一、地上戦が繰り広げられた沖縄。鉄の暴風と表現される激しい米軍の攻撃により県民の4人に1人が死んだ。
そんな凄惨な沖縄戦の時に実際にガマ(沖縄の方言で洞窟という意味)で起こったのであろう地獄がまさにそこにあった。
演劇とはいえ、目を背けたくなった。
沖縄では、子供の頃から沖縄戦の話を元に平和学習を行う。
その中で強く印象に残っている、赤ちゃんの泣く声で敵に居場所がバレるから、母親に「子供を殺せ」という命令するエピソードがある。
文章で読むだけでも「なんて酷い。惨たらしいんだ」と思っていた。
ただ役者の鬼気迫る演技を前に、自分は何も分かってなかったことに気付かされる。
鬼の形相で子供の首を絞めようとして、でも出来ない母親。
それでも「殺せ!」と叫ぶ、周りの人間たち。
とてもじゃないけど、見てられない。
自分に子が生まれたこともあってか強く感じる、むごさ。
戦争を指揮する日本兵が沖縄人を虐げ、それに影響され最初は助け合っていたはずが沖縄人が沖縄人を罵り、殺す。
極限状態で皆が狂い、戦争の愚かさがこれでもかと描かれていた。
舞台セットも相まって、実際にそこで戦争を目の当たりにしているような衝撃だった。
演劇だから出来る生感。これは映像では伝わらない。
平和学習のための資料でもない、沖縄戦をテーマにしたエンタメじゃない。沖縄戦で繰り広げられた地獄がそこにあった。
目を背けたくなったけど、「無関心でいるとこれが現実になるのか」と思い、目をかっぴらいて見続けた。
『戦争は地獄。2度と繰り返してはいけない過ち』
そんな事は分かっている。しかし、どうやら沖縄県民と内地の人ではイメージする戦争の粒度に大きな差があるらしい。
県外出身の妻が「沖縄に住むから」と自分で平和記念公園やひめゆりの塔に行って、沖縄戦のその凄惨さに衝撃を受けていた。
そして、この舞台を見て、自分も平和学習で学び、なんとなく分かっていた気になっていたことが分かった。
沖縄と内地でも認識が違うが、同じ沖縄県民の中でもそれは大きく違う。
この舞台はフィクションではあるけれど、実際に行われていたであろう事実である。
「戦争は2度と繰り返してはいけない」
それは紛うことなき真実である。
しかし、それを伝えるだけでは足りない。願うだけでは足りない。
それを”じぶんごと”として受け止めてもらわなければならない。
この舞台には、その力があると思う。
いつだって戦争を起こすのは、国民ではなく一部の権力者だ。
今も国民の声をよそに、政府が国を戦争へと向かわせている。
だから、この舞台を見てあの悲惨な戦争を追体験してほしい。
そして、二度と同じ過ちを犯さないように我々は動かないといけない。
この舞台は沖縄だけでなく、全国で上演するべきじゃない?
もしくは常設の劇場でロングラン公演とかにして、沖縄に来た人に見てもらえないのかな?観光とかと絡めてさ。
沖縄の人だけしか見られないの、もったいないよ。
クラウドファンディングとかしてないかなぁ。
してたら、全力で応援する。