沖縄の地酒として全国的にも有名な泡盛。
県民はもとより、県外から来た観光客にも愛される泡盛はその種類も幅広く、沖縄県内には数多くの泡盛酒造があります。
しかし、数ある泡盛酒造の中で唯一昔ながらの甕仕込みで泡盛を作りづつけている酒造が西原町にあるのをご存知でしょうか?
その酒造が西原町小那覇にある石川酒造場。
ここは創業から変わらない、昔ながらの甕仕込みを今も貫いている酒造なんです。
昔は泡盛を作る過程で、陶器の甕を使って熟成を行っていました。
しかし、現在は作業の効率化のためにステンレスのタンクによって管理している酒造場がほとんどです。
ステンレスのタンクに比べると、甕仕込みの泡盛づくりはとても手間がかかります。
しかし、その甘くて芳醇な香りと舌触りのまろやかさは、甕仕込みならでは。
特に長年熟成させた古酒の芳醇さは、あのペリーが沖縄に訪れた際に「フランスのリキュール酒のようだ」と評した、と書物にも記されています。
手間暇を惜しまず、昔ながらの製法で丁寧に造られた石川酒造場の泡盛。
そんな泡盛の製造現場を生で見てみたくて、今回「石川酒造場」に工場見学に行ってきました。
実際に現場に行ってみると、その風味の違いに驚きました。
本音をいうと、僕は泡盛は少し苦手で普段はあまり飲みません。
しかし、見学を終えて工場を出た頃には口が完全に泡盛の口になっていました(笑)
我が地元、西原町にこんなに素晴らしい酒造があったのか。
ぜひこの感動を町内の人はもちろん、沖縄県民、さらには全国の人に知ってほしい!
今回は今も伝統的な甕仕込みにこだわる石川酒造場の魅力についてご紹介します!
「おいしい泡盛を造るため」石川酒造の甕仕込みへの強いこだわり
一度で大量に仕込める上に、万全な温度管理。
多くの酒造が泡盛づくりにステンレスのタンクを導入していく中、石川酒造場は昔ながらの甕仕込みでの泡盛づくりを貫きました。
かかる手間を減らすよりも、甕仕込みならではの芳醇で深い味わいを求めた石川酒造場。
そのこだわりは、廃業する酒屋へ行っては甕を買い集めたほどです。
「甕仕込み」をそのまま商品名にしていることからも、甕仕込みへの強い思いを感じます。
工場の外にも甕がたくさん並んでいます。
しかし、「昔ながらの製法で」と口でいうのは簡単ですが、実際に行うのは大変です。
80もの甕に仕込まれたもろみを、状態を見ながら毎日かき混ぜまぜなければなりません。
今回お話を伺った職人さんにもお話を聞いたところ、「盆も正月も休みなく毎日やっています」と仰っていました。
さらには、その日の気温や湿度に合わせて温度管理も細かく行なっていきます。
しかし、陶器の甕に温度調整機能がついているわけではありません。すべては職人の手と感覚で行われます。
80甕すべてのもろみをかき混ぜるだけで、かかる時間は約4時間。
毎日欠かさずもろみをかき混ぜ均一化することで、より良い醗酵環境を作っていくのです。
効率化を捨ててまで、手間暇かかる甕仕込みにこだわる石川酒造場。
それもこれもひとえに「おいしい泡盛をつくるため」
その泡盛づくりへの情熱には、頭が下がります。
甕仕込みだからこそ生まれる、芳醇な香りとまろやかさ
仕込みだけでなく、甕での貯蔵にも大きなこだわりがある石川酒造場。
石川酒造場では、蒸留したばかりの新酒を甕で約2~3ヵ月寝かせます。
というのも、蒸留直後の新酒には「みーかじゃー」と呼ばれる新酒特有の匂いがあります。
しかし、甕で寝かせることでその匂いを和らげ、一般酒でも飲みやすい味わいになるそう。
さらには、甕に含まれる成分が加わり、深いコクと甘い香りとまろやかさをもった泡盛に仕上がります。
他にも「甕で寝かせる泡盛に音楽を聞かせる」や「自然の環境で熟成させるために気温管理はしない」など、石川酒造ならではのさまざまなこだわりが。
興味がある方は、ぜひ現地で職人さんの生の話を聞いてみてください。
メープルシロップのような甘くて芳醇な香り。600本限定の古酒「沈黙」
甕仕込みによって、泡盛の風味が豊かになるのはここまでにも説明しました。
ですが、甕仕込みの面白さはここからです。
実は甕にもそれぞれ特徴があり、熟成する甕によってバニラの香りやメープルシロップのような香りなど違いが生まれるのだそう。
そして、甕で寝かせれば寝かせるほど甕の成分が多く泡盛に加わり、その差がはっきりあらわれます。
ちなみにこちらの泡盛「沈黙」は32号甕で20年以上熟成された泡盛。
少し香りを嗅がせてもらいましたが、その香りの素晴らしさには思わず声を上げてしまいました。
比喩ではなく、本当にメープルシロップのような甘い良い香りがするんです。
そして、空気に触れることで香りがどんどん花開き、より深くなっていきます。
しかし、その香りとは裏腹に口当たりはまろやかでスッと喉を通り抜けていく。
こんな泡盛があるのかとびっくりしました。
ちなみにこの「沈黙」は数量限定商品のため、25000円と通常の泡盛と比べると金額はお高め。
残りわずかとなっているため、興味がある方はお早めに購入することをお勧めします。
他にも、看板商品である「甕仕込み」や、製造過程で取り除く油分をあえて残した「粗ろ過」の泡盛など、さまざまな泡盛を製造しています。
中でも粗ろ過の「玉友」は、通常の泡盛と違って舌に絡むようなオイリーで少しとろっとした舌触り。
味も柔らかで飲みやすく、あまり泡盛を飲み慣れていない人でも飲みやすい泡盛です。
ミニボトルも販売しているので、少量からお試しできます。
あくなき探求心。もろみ酢の元祖であり、美容ドリンクで日本一に!
伝統的な泡盛づくりにこだわる一方で、石川酒造場では新しい技術を取り入れて酒以外にも商品開発を行っています。
実は石川酒造は、飲むお酢として有名なもろみ酢の元祖。
泡盛を造る過程で出るもろみ粕のクエン酸にいち早く着目して、なんとか商品に生かせないかと研究を重ねた結果生まれたのが、もろみ酢です。
「疲労回復」「ダイエット」「美容」 などに効果があるといわれているもろみ酢。
今や沖縄を飛び出して、全国でも健康飲料として注目されています。
しかし、いくらまろやかで飲みやすくても、酢の酸っぱさが苦手な人もいます。
そんな人にも、もろみを生かしたドリンクを飲んでもらいたい。
もろみ酢の健康成分はそのままに、もろみ酢よりも女性に親しみやすくするにはどうすればいいか?
石川酒造場は琉球大学と長崎国際大学と共同開発を行い、新たにもろみを生かした乳酸菌飲料も発明しました。
その名も美らbio。
もろみ酢にも含まれていた酵母菌、黒麹菌に乳酸菌も加えることに成功した美らbio。
乳酸飲料で飲みやすく美肌効果や整腸作用にも効果アリと、まさに女性にピッタリのドリンクです。
さらに、その機能性と功績が評価され日本全国で優れた美容健康食品を決めるジャパンメイドビューティーアワード2018で金賞を受賞しました。
日本一の冠をもつ企業が地元にある、それだけで地元民としては誇らしい気持ちになります。
ですが、それ以上に新しい技術を学んで新たなジャンルにチャレンジする精神が素晴らしいですよね。
美らbioについて説明をしてくれた職人さんが、誇らしそうに語る姿がとても印象的でした。
石川酒造の工場見学に行ってみよう!
県内唯一の甕仕込みという珍しさから、海外から訪れる方もいるという隠れた観光スポットでもある石川酒造場。
石川酒造場の工場見学の工程は、
- 製造工程のDVD観賞
- 工場内見学
- 試飲(運転手は飲めません)
の3つで、所要時間は約1時間程度です。
参加は無料ですが、1週間前までの予約が必要となります。
普段は見られない酒造りの裏側を見学しながら、ここでしか聞けない酒作りの職人たちのお話を聞ける工場見学。
作り手の思いや背景を知ることで、今までの泡盛の印象がガラリと変わるはずです。
見学は泡盛の試飲もできます!ぜひ、行ってみてください!
詳細情報
石川酒造
住所: 〒903-0103 沖縄県中頭郡西原町小那覇1438-1
時間: 8:30~18:00
定休日:日曜・月曜
電話: 098-945-3515