本屋で働いています。
そう伝えると「実は結構体力がいる仕事なんでしょ?」とよく言われます。
たしかに本がたくさん入った段ボールは結構重く、持ち運びには苦労します。
ですが、重いといっても本の詰まった段ボールの重さなんてたかが知れているし、持ち運びよりもお店での展開・陳列の方が主な作業。
常に重い段ボールを持って動き回っているわけではないんです。
まあ、大きい書店さんはそういうこともあるかもしれませんが、うちのようなそこまで大きくない店舗では肉体労働と感じるほどの作業はありません。
学生時代にやった引っ越し作業の方が死ぬほど大変でした。
その一方で、いまいち知られていない書店員の実態が「情報収集力」の大切さ。
本屋にはさまざまなお客さんがいらっしゃいますが、そのお客さん全員が自分の欲しい本のことを分かっているわけではありません。
実はウチの書店でレジ業務の次に多いのがお客さんからの問い合わせ。
「この本あるかしら?」
と目当ての本をもとめて、私たちスタッフに問い合わせしてきます。
ただ、このお問い合わせが非常に厄介。
スマートフォンで画像を見せたり、本のタイトルをメモして伝えてくれるお客さんは問題ありません。
本のタイトルをデータベースに入力すれば一発で在庫があるかどうか分かります。
ですが、そんな親切なお客さんは実はごく一部で、それ以外のお客さんは本のふんわりとした情報だけ持って書店へとやってきます。
「なんかのテレビで見たんだけど…」
「新聞で見かけてさ…」
「電車の中づり広告に…」
こんなふんわりとした情報を持って、書店にやってこられるお客さんがたくさんいます。
でもこちらも書店員ですから。事前に対応策をしっかりと練ってお店でお客さんをお待ちしているわけですよ。
電車の中吊り広告で紹介されているもの、テレビでこれから放送されるものなど、こういったものは実は出版社や取次など色んなところから前もって情報が共有されているんです。
ですが、一番大変なのはこれすらない方です(笑)
「○○(ウチから遠く離れた書店)のどこどこのお店でこの前見たんだけどさ…」
「タイトルも内容も忘れたんだけどさ、青い表紙でさ…」
「あの本ある?」
知らんがな!
「そのお店で見たなら、そこで買いなさいよ!もしくは聞きなさいよ!」
「青い表紙の本なんて世の中に腐るほどあるわ!」
「どの本だ!」
「いくら本屋で働いているからといっても、担当しているジャンルはそれぞれ違うし、神様じゃないから、そんな少ない情報で探せるか!うがー!」
…と、心の中で思いながらも全力で他に何か手掛かりになる情報はないか、いろいろ質問をして聞き出します。
その際に必要なのが情報収集力。
本の大きさを聞いてみたり、どの媒体で知ったのか聞いてみたり、とりあえず1冊見せて思い出すことがないか探ってみたりします。
それもこれもひとえにお客さんの期待にこたえたいから。
いくら無理難題を言われても本好きとしては、やはりウチの店にきてくれたお客さんの力になりたいわけです。
その努力が実を結んでお客さんの目当ての本が見つかる場合もあれば、時間切れや在庫なしでご期待に応えられない時もあります。
そんな時にはちょっと残念な気持ちになるのですよ。
そこで書店員からお客さんへ1つお願い。
本屋に来る時は何か一つでもいいからはっきりとした情報を持ってきていただきたい。出来れば本の内容に関する何かしらの情報を。
一番確実なのはISBNと呼ばれる13桁の数字。これがあれば一発です。
せっかく来ていただいたからには、こちらとしても喜んで帰っていただきたいのです。
素敵な本とお客さんの出会いをお手伝いをするのが我々書店員の仕事です。
お互いが気持ちいい気持ちでいられるよう、ぜひ気になる本を見つけた時はメモをとってみてください。
以上、一書店員からのお願いでした。