「フリースタイルダンジョン」という人気番組の影響で、一気にブームとなったMCバトル。
知らない人からしたら、ただの悪口の言い合いに見えると思いますが、実はMCバトルってしっかりとした技術の上に成り立つディベートのようなものなんです。
中でもラップを構成する要素の中でも1つの大きな要素であるライム(韻を踏む事)の面白さは奥が深い!
特に言語学など、言葉が好きな人には知ると絶対楽しいですよ(^^♪
という事で、今回は大学で言語学を専攻していた俺から見たラップの韻の面白さについてまとめてみました。
ダジャレと混同されがちですが、韻は高度な言葉遊び。
時にはパズルのように、時にはミステリー小説のように、構築された言葉の数々はもはや文学と言ってもいいんじゃないかなと思います。
食わず嫌いで毛嫌いせず、是非とも興味をもっていただけたら嬉しいです(^^♪
母音を合わせる韻という文化
これはテレビの企画でやっていたもので、「あいあえ」という母音に合わせて言葉を穴埋めしていくというもの。
たとえば、
今日のご飯は炊き立て
これが母の愛だね
でも毎日カレーは飽きたぜ
たまには食べたい牡蠣鍋
とこんな風に、同じ母音を持つ言葉やフレーズを並べることを韻を踏む(ライミング)と言います。(下手ですみません笑)
ラッパーたちはもう本当にアタマの中どうなってるんだろうってくらいビシバシ母音を合わせてきます。
最近では実際に韻を検索するサイトなんてのもありますが、これと似たようなのが、ラッパーの脳の回路にあるんでしょうね。
2、3文字くらいなら頑張れば、自力でも踏めるかもしれないけど6、7文字くらい踏んでくると、もう凄すぎて「ウヒャー!\(◎∀◎)/!」ってなります(笑)
韻と韻をつないでメッセージを伝える。
母音を合わせていれば、韻。
と原理はすごいシンプルなんですが、これだけで終わらないのがラッパーの凄いところ。
あくまで本質は自分の言いたい事を言うところにあります。
そこで、ラッパーは頭に浮かんだ膨大なワードの中から自分の主張にそぐうワードを選び取って韻を踏みます。
韻を踏むために関係のない単語を並べるラッパーより、韻も踏みながら話の筋は通っているラッパーの方が聞いてて心地いいし、何よりカッコいいんです。
よくダジャレと混同されがちですが、ダジャレと違うのは言葉と言葉の間に魅せるこのメッセージ性にあると思います。
たとえば、ライム至上主義(韻を踏む事を第一としている)で知られるICEBAHNのFORK。
ラップ歴2年の若手注目株D96を相手に、ベテランであるFORKが披露したラップがこちら。
すべて母音が「ああい」の3文字の韻をたて続けに踏みながらも、話の筋は一切ぶれてません。
「お前のラップはまだまだだ」と若手をたしなめながら、俺のラップはヘッズ(HIPHOPのファン)は興奮させるほどヤバいんだというメッセージに終始してます。
これだけスキルを見せつけながら、ベテランにラップについて語られると若手は打つ手なしですね(^^;
火曜の夜はFORKさんのラップ聴いてシコる日だ。(昨日)#フリースタイルダンジョン #FORK #ICEBAHN #D96 #MCバトル #HIPHOP #Rap pic.twitter.com/C4bFxNBoew
— レペゼン君@Represent (@represent_heads) 2017年12月13日
上手いラッパーになればなるほど6、7文字韻を踏んでいるのに話の筋が一切ぶれない、みたい事を平気でやってのけます。
次のフレーズは「あんあいおえんう」で語尾の8文字を踏んでいて、ここまで来るともはや異次元です(笑)
見たら判るだろうこっちのワンサイドゲーム
フロウもライムも足んないよ全部
(フリースタイルダンジョンMonsters War2017より)
特にこのFORKはフリースタイルダンジョンの現モンスターであり、神がかり的なライミングスキルをもつラッパーで有名です。
参考:FORK(フォーク)【ラッパー解説】押韻主義『ライムセーバー』を名乗るフリースタイルダンジョン2代目の門番|レペゼン社会不適合者
参考:【初心者向け】韻の神様の韻を解説する|韻 fumu.in
音源もカッコいいので、是非。
韻を組み立てながら文全体を構築する
さて、ここまで、
- 韻を踏む
- 韻と韻をつなぐ
ときましたが、最後に紹介したいのは文全体の構成力。
凄いことにラッパーは韻を踏むだけじゃ飽き足らず、韻をいくつも組み立て全体を構成していきます。
例えば、こちらフリースタイルダンジョン初代モンスターのDOTAMAのバース。
参考:フリースタイルダンジョンの韻を解説する(初心者向け)|韻 fumu.in
こちらのサイトの説明が分かりやすいので、是非見てほしいのですが、このDOTAMAのバースのすごい所はその構成力。
はじめに「能力なんて(おうおうあんえ)」「情緒不安定(おうおうあんえ)」で7文字の長めの韻を踏みながら、それだけだと単調になると考えたのか、短めの韻で間にワンクッション挟みます。
そして、その過程で出てきた反町隆史という言葉から彼の有名な曲「POIZON(ポイズン)」の「言いたい事も言えない こんな世の中じゃ」というサビの歌詞を引用しました。
そして、最後にそのまま「ポイズン」と言わず、「もうどく」と日本語にすることで、最初に踏んだ韻と同じ母音の「猛毒なんです(おうおうあんえ)」でオチをつけています。
伏線を張って、最終的に全部回収するミステリー小説さながらの構成力です。
フリースタイルダンジョン#17
DOTAMA vs ACE
ほぼ互角のMCバトルでした‼︎ ACEはライムが固いスタイル。 DOTAMAはアンサーが的確で、観客をも味方に付けさせるようなスタイル。 名勝負でした! RT pic.twitter.com/W9LjT7Boh7— JapaneseHiphop🇯🇵ch (@hiphop_jp2020) 2018年2月22日
ちなみに、これだけの事を即興でやっています。すごくないですか?
まとめ
ただダジャレのように言葉を合わせるんじゃなくて、前の言葉とのつながりや言いたい事を込めながら、韻を踏むのがラップの魅力のひとつ。
ですが、韻を踏むことはラップの大きな要素ではありますが、ただラップの面白さは韻だけではないんですよ!
言葉だけでも韻以外に、ダブルミーニングのような言葉遊びだったり、独特なワードセンスだったり。
さらに言えばラップは音楽でもありますから、その奥の深さはすごいです。
そんな文学的要素と音楽的要素が複雑に絡んで、それぞれがオリジナリティを出して表現しているのがラップです!
もし興味が湧いたなら是非一度見てみてください(^^♪
もしディスや悪口といったものが苦手なら、abema.tvで放送しているNews Rap Japanもオススメ!
ラッパーたちが話題のニュースをテーマにラップするのでラップの面白さの片鱗を感じられると思います!
個人的にはこっちの方が好きかも。