人って隠されると何でその中身を見たくなっちゃうんだろうね。
例えば、ロックがかけられた恋人のスマホしかり、DVDショップの大人のカーテンの向こうしかり。
どうも人間というのは隠されたものを見たいという心理には勝てないようです。
今回も誘惑に負けてしまいました。
普段はミステリーとか推理小説とかあまり読まないんですけどね、つい買ってしまった。
泡坂妻夫著『生者と死者』
この本、何が面白いかって袋とじになってるんですよ。
その袋とじのまま読むと短編小説、袋とじを開けると長編小説。
1冊で2度楽しめるんです。
ストーリー構成やトリックに仕掛けを施してる小説というのは多いでしょうが、本自体に仕掛けがある本というのは少ないんじゃないでしょうか?
30ページくらいなので本が苦手な人でもサラッと読めるくらいのボリューム。
そして、ここがよく考えられてて凄いんですけど、袋とじされてるのに、しっかりと短編小説として成り立ってるんですよね。
短編小説として楽しんだら、今度は袋とじを切り開きます。
本にカッターを入れるなんて、以前遊んだゲームブック『武器と防具は文房具』以来。
中々ない経験なのでドキドキします。
全部の袋とじを開けると、短編小説は消えて長編ミステリー小説になりました。
そして、この長編ミステリーがまた短編で読んだ話と全く違った顔を見せます。
1ページ目から「あれ?そっちだったの?」という展開に、どんどん物語に引き込まれます。
最初からそのまま読んでいたら、1ページ目からここまで引き込まれなかったんじゃないでしょうか。
結局、約200ページもある小説をあっという間に読んでしまいました。
これ面白いよ、ホント。おすすめです。
新しいアイデアとは新しい場所に置かれた古いアイデア
仕事は楽しいかね?にも書かれていたけど、新しいアイデアというのは、新しい場所に置かれた古いアイデアなんだそう。
たしかに袋とじ自体は何も新しくないし、むしろ昔からある手法。
ただ、これを小説に使う、しかも袋とじを上手く活用して短編小説にしてしまういうのは非常に面白い画期的なアイデアだと思うんです。
同著者の別作品。こちらも仕掛けがあるんだそう
置く場所を変えると、そのものが持つ性質・性格が変わるというのは思考の整理学でも言われていたこと。
僕らが当たり前に思っているモノやコトも置く場所を変えたら、新しく面白いものになるのかもしれない。
もしかしたら、僕ら自身も置く場所を変えることで全く新しく別のものになれるのかもしれない。
そんなことを思いました。