良い本って物語が面白いだけじゃなくて、その本の向こうに部屋というかなんか空間がある気がします。
ただ文章を読んでるんじゃなくて、まるで自分がその世界にいるような気持ちになって、それは仕事帰りに立ち寄る立ち飲み屋とかブックカフェみたいに居心地いいんですよね。
まるでサードプレイスみたいな本。
そんな本に出会うと嬉しくていつも持ち歩いてしまうのだけど、今回の旅の帰りのお供に買った本がまさにそれでした。
異世界居酒屋のぶ。
異世界ものってやたらと多すぎるので正直毛嫌いしてたのだけど、この本だけは気になってたので京都駅の三省堂書店で購入。
あらすじ
古都アイテーリアの裏路地に、一風変わった店があるという。
若い衛兵ハンスは同僚のニコラウスに連れられてその店──居酒屋「のぶ」を訪れる。
木の引き戸を開けた先にいるのはノブ・タイショーと呼ばれる主人と、給仕のシノブという女性。
こぢんまりとした店内は、不思議な異国の情緒を漂わせており、見たことも聞いたこともない料理を出してくる。
そして、キンキンに冷えたエール──「トリアエズナマ」がとんでもなくうまい!
噂は広がり、次々に客が訪れるようになるが、中には込み入った事情を持つ者もいて……。
これは、異世界に繋がった居酒屋「のぶ」で巻き起こる、小さな物語。
異世界版『孤独のグルメ』といった感じで異世界につながってしまった居酒屋のぶと、そこを訪れる異世界の住人との心温まるエピソードと美味しい料理を堪能する飯テロ小説。
僕らからしたらありふれた料理も異世界の住人からすると、物珍しくてそして絶品の料理ばかり。美味しそうに食べる彼らの様子を見てると、どれもごちそうに見えてくる不思議。
いや実際ごちそうなんだろうなぁ、元料亭の板前がつくる酒の肴なんて絶対美味いに決まってる。そして読んでると自分も呑みたくなってくるんですよ。ああ、お腹空いてる時に読むんじゃなかった。。
気づけば残りのページがあと少し。なんだか「もうすぐ店じまいだよ」と言われてるような気がして寂しくなる。それでも続きが気になるのでページをめくる手が止まらなくてあっという間に読み終えてしまいました。ああ、終わっちゃった。
イラストこそ可愛らしいものの、内容は孤独のグルメの原作者の久住氏もイチオシするほど骨太なグルメ小説。
調べてみると、どうやらこの本はシリーズ化しているらしいので帰ったら早速続編を買いに行こう。
でもその前に皆が美味そうに飲む『トリアエズナマ』がどうしても飲みたくて途中、熱海駅で下車して生ビールを買いに行った僕でした。