初めてこの小説に出会った時は、その発想にしびれましたね。
初めて見たのは1年前、池袋のBOOK AND BED TOKYOで。
たくさん本が並んでいる中、本棚の片隅に置かれたいくつかの封筒が。
「何かの付録?それともお店の人が忘れた書類かなにかかな?」と思って手に取ったら、びっくり。
それ、手紙スタイルの小説だったんです。
手紙のような文体の書簡体小説は今までもありました。
けど、このBOOKSOUNDSが販売している「何者からかの手紙」は実際に封筒に入っている手紙なんです。
ちら。
実は… 東京ソラマチ店にも…
あるんですよ…
『何者からかの手紙』#神保町いちのいち #東京ソラマチ pic.twitter.com/EkHU5uwh6j
— 神保町いちのいち 東京ソラマチ店 (@SSolamachi) 2017年1月9日
自費出版?だからか、ある特定の書店にしか置いていない『何者からかの手紙』
こうして書店にポストがあって、その中にいくつもの封筒が入っているんです。
この日は青いラーメンを食べるために本所吾妻橋まで来ていたので、
そのままソラマチ書店まで足を延ばして買ってきちゃいました。
ありそうでなかった、このアイデア。
よくぞ考えて、そして形にしてくれました!
手紙というスタイルからすでに物語を感じられるのがたまらない!
今回買ったのはこの3作。
『プールサイドからの手紙』
『話題からの手紙』
『冷凍庫からの手紙』
人が一人もいない!(笑)
まず、この手紙小説を読むためにぶち当たる壁。
封を開ける、この作業がもうたまらないんですよ。
最近、LINEですぐに連絡取れるから、手紙なんて書かないでしょ?
だから手紙の封を開けるという体験ってなかなかないじゃないですか。
まるで袋とじみたいに開けてみないと内容が分からない、このドキドキ感がいい。
そして、お気づきかと思いますが、手紙ということは、つまり送り主がいるわけでしょ?
この手紙の送り主がただものではないわけですよ。
『火曜日』からだったり、『話題』からだったり、『冷凍庫』からだったり。
とにかく『人』ではない、というかもはや『物』ですらないようなものから手紙が届くわけです。
これはもう面白くないわけがない!
今は新作が追加されて、全部で51種類。
1冊162円(税込)なので全部買っても8000円弱!
個人的には『タコ』と『イカ』の手紙が気になります。あと、ちょっと異質な『果たし状』も面白そう。
でもって、手紙というスタイルということで『何処かの誰かからの手紙を自分が読んでいる』というこの不思議な感覚。
つまり、小説や映画のように1人で物語の世界に入り込むんではなく、手紙ということで、いもしない送り主へ思いを馳せちゃうんですよね、知らずしらず。
まるで自分が物語の登場人物になったような没入感。
この、現実とフィクションの間のなんともいえない世界観がもうたまらんちゃんなわけですよ。
また使ってる紙もニクい!わら半紙なんですよ。この触り心地もたまらない。
放送作家の鈴木おさむさんが『新企画 渾身の企画と発想の手の内すべて見せます』という本の中で、
同じものでも器を変えるだけで新しいものになる
的なことを書いてたけど、まさしくこの手紙小説がそうだなと思います。
小説の中身だけで勝負するんじゃなく、その器そのもの『本』から『手紙』という器に小説を移し替えることを考える。
それだけでこんなにも面白くなるんですね。すごい発想だと思います。
手紙以外だとしたら、他に小説を入れる器として何があるだろう?
読んだ先から消えていくトイレットペーパー小説とか?
と思ったらありましたよ(笑)
しかも、ホラー。トイレでホラーは怖さ倍増ですね。
もしくは壁面にプロジェクションマッピングで文字を流すとか。
あとは佐藤ねじさんのレシートレターのようにレシート小説とか?
そういえばフランスには物語を変える自動販売機があるんだとか。
まだまだ『小説』を移し替える『器』はありそう。
とにかく本来の物語の面白さだけでなく、手紙を読むという物語体験をその身に含みこんだ手紙小説。
もし、街で見かけたら買って読んでみてほしい!
1通162円とお安く、しかも4ページと読みやすいので、普段読書しない人にも読んでもらいたいなぁ。
現在、販売しているのは、
- 青森 古書らせん堂
- 札幌 tronika
- 東京 タコシェ
- 東京 Amleteron
- 東京 神保町いちのいち
- 東京 ヴィレッジヴァンガード 立川ルミネ店
- 東京 三省堂書店 東京ソラマチ
- 愛知 幸田駅前書店
- 京都 ホホホ座
- 大阪 (本)ぽんぽんぽん
- 広島 紙片
- 長崎 ひとやすみ書店
都内でも5店舗しかないんだよね。もし見かけたらラッキー!
通販もやっているので、お近くにこれらのお店がない方はぜひ。